メッセージ

金継ぎをキッカケに、漆という日本の文化に触れてください。

香川漆器 伝統工芸士
中田 陽平

中田 陽平

金継ぎへの注目の高まりを感じています

祖父の代から家業として漆(うるし)仕事をしていて、私自身も香川漆器の伝統工芸士をしています。

漆を使用して器を修復する「本金継ぎ」は依頼があれば対応していましたが、ここ数年で依頼が増えました。「親や祖父母から受け継いだ器を直したい」「大事にしてきた器を直したい」ともってこられる方が多いです。SDGsの考えが広がっていることもあり、ある程度費用がかかっても器を長く大事に使い続けたいという人が増えていると感じます。

また、漆を使用しない「簡易金継ぎ」のセットがWeb上で販売されるなど、金継ぎがより手軽になってきていますよね。「自分で簡易金継ぎをやってみたけど、うまくいかなかった」と言って、私たちのところに器をもって相談に来られる方もいます。

本金継ぎの工程

本金継ぎの工程は、まず小麦粉と漆を練って「麦漆」をつくり、器の割れや欠けを接着。そして、隙間があいているところに、木の粉と漆を練り合わせた「刻苧(こくそ)漆」をパテのように塗り、器を平の状態にします。欠けや割れの状態によって、砥石の粉と漆を練った「錆漆(さびうるし)」を使用することもあります。

漆で接着した器は、「室(むろ)」という湿度70%以上、温度20~25度ほどに保たれた部屋で保管し、表面を乾燥させます。

麦漆は乾きにくく、圧着された隙間の麦漆が乾燥するまでには時間がかかります。完全に漆が乾いた数週間後に、圧着した部分に朱色の漆で線を描き、その上から金粉をふって完成です。

本金継ぎの面白さと大変さ

本金継ぎの面白さは、お客様がとても大事にしている器を修復できることです。なぜこの器を大事にしているのか、どんな思い入れがあるのかを話してくださるお客様が多く、直す側としても気合いが入ります。そして、仕上がったときに喜んでくださる姿を見るとうれしいですね。

苦労した経験として思い出すのは、表面の釉薬(ゆうやく)が固く、内側が非常にもろい材質でできている茶道用の樂焼※のお茶碗を直したときのこと。割れを直そうとして漆を塗ると、ほかの箇所にも漆が浸透したり、もろい材質であるため、少し触るだけでも割れてしまったりするので、扱いに苦労しました。

どれだけ経験を積んでも、今まで直したことがないような器に出合うので、非常に奥深い世界です。

※樂焼は桃山時代(16世紀)樂家初代長次郎によって始められ、千利休の手を経て世に出された一子相伝の焼き物。
800度という低温で焼き締めるために非常に繊細。

本金継ぎと簡易金継ぎとの違い

本金継ぎと簡易金継ぎの違いは、使用する素材と工程の長さです。簡易金継ぎの場合は人工的に作られた素材を使用し、乾燥させる時間が短いです。

そのため、食べ物をのせる食器は自然素材を使用する本金継ぎが望ましいですが、飾り皿などは簡易金継ぎでも問題ありません。

最近は、簡単なものは簡易金継ぎで自分でなおし、難しいものは職人に頼むという流れができつつある気がします。金継ぎが身近になっていくことで、器を長く使い続けられるようになのは非常によいことだと思っています。

本金継ぎの器
簡易金継ぎの器

本金継ぎは、漆芸(しつげい)のひとつ

金継ぎは漆芸の手法のひとつです。漆には素材を守る性質があり、たとえば漆器は木に漆を塗ることで木を傷みにくくします。そのため、漆器は漆を塗りなおすことで、何代も使い続けられるんです。

また、神社仏閣にある鳥居は朱の漆で塗られていて、1000年以上前に作られたものが漆によって守られています。このように、漆は日本の文化として使用されてきたんです。こうした魅力を多くの人に知ってもらえたら、漆芸を後の世代にも伝えていくことができます。

私は香川漆器の伝統工芸士です。一般的に、漆器は作られた産地によって名前がつく「産地指定」が多いです。しかし、香川漆器は「技法指定」で、蒟醤(きんま)、存清(ぞんせい)、彫漆(ちょうしつ)、後藤塗(ごとうぬり)、象谷塗(ぞうこくぬり)という5つの技法で作られたものだけが香川漆器と呼ばれます。

漆器は黒や朱色のイメージがあるかもしれませんが、香川漆器は多色使いが特徴です。香川は金山がなく金粉を多く使用できなかったため、多色使いの漆器が作られたと言われています。

このように漆の世界は奥深く、日本の文化として続いてきたものです。金継ぎをきっかけにして伝統工芸にも興味をもっていただけたらうれしいです。

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